新潟県の佐渡で、野生復帰をめざして放鳥した特別天然記念物のトキに、ひなが誕生したというニュースが報じられています。人工飼育施設ではなく自然界でひなが誕生するのは、36年ぶりとのことです。
大学教員として着任した時にご指導いただいた先生がエゴノリの研究をなさっていたので、私もこの海藻の調理性や物性などについて研究しました。エゴノリはホンダワラやコンブなど、大型の海藻に着生して育つ紅藻類の一種です。昔はテングサとともに、寒天の材料としても使われていたそうです。
長野県は南北に長く、嶮しい山々や急峻な川などにによって区切られている地域ごとに、多様な食文化が受け継がれてきました。県内では、エゴ(イゴと呼ぶ地域もあります)料理について話がはずむ地域と、「何ですか、それ?」と言われてしまう地域とがあります。「海なし県の長野県で海藻料理ですか?」と思いますよね。長野県では、主として、北信濃の県境から飯山を経て長野あたりまでと大町以北の大北地域など、日本海からの塩の道にそってエゴノリ料理を食べる地域が広がっています。
葬祭などの折の行事食として、エゴノリを煮溶して羊羹のように固め、それを切って酢味噌やワサビじょうゆなどをつけていただく地域が多いようです。洗ってそのまま煮溶かし、見た目こんにゃくのように固める場合と、水洗いしては天日に干して色素を抜いて「白エゴ」にしてから食べる地域とがあります。福岡県の「おきゅうと」も同じエゴノリ料理ですが、長野県とは食べ方は違っています。興味深いですね。
エゴノリの研究をしていた時、長野県に入ってくるエゴノリの産地を訪ねようということで、佐渡の海にいって調査をしました。といっても当時若かった私は、海で泳いでいて、同行した先生方にあきれられてしまったのですが・・・。トキの話題を聞いて、何年ぶりかで佐渡に行ってみたいと思いました。でも、トキの自然界での繁殖については、長野県にもトキが飛んでくるようになる日まで、もう少し静かに見守っていたほうがいいのかもしれません。当面は、佐渡の海を眺めにいくと考えることにしましょう!!
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